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【ビル管理必見】業務用エアコンが冷えない・暖房が効かない原因と対処法

2026.02.13

施工実績

はじめに:空調トラブルはなぜ重要なのか

「業務用エアコンが冷えない」「暖房が効かない」「設定温度にしているのに室温が変わらない」——ビル管理業務において、空調トラブルは最もクレームに直結しやすい設備トラブルです。

国土交通省の調査によれば、商業施設やオフィスビルにおける設備クレームの約40%が空調関連であり、その対応遅れはテナント退去リスクにも直結します。

しかし実際には、重大な故障ではなく初期確認で解決できるケースが全体の約60%を占めています。本記事では、業務用エアコンが冷えない・暖房が効かない場合の原因別初動チェックリストを、ビル管理会社様向けに実務目線で整理します。

業務用エアコンが冷えない・暖房が効かない主な原因

業務用エアコンの不調には、以下のような原因があります:

1. 運転モード・設定ミス(発生率:約35%)

  • 冷暖房切替の誤設定
  • 集中制御による制限
  • タイマー設定の競合

2. フィルターや内部の汚れ(発生率:約25%)

  • 吸込口フィルターの目詰まり
  • 熱交換器の汚れ
  • ドレンパンの詰まり

3. 室外機の設置環境不良(発生率:約15%)

  • 吸排気の障害
  • 直射日光や外気温の影響
  • 周辺機器との干渉

4. 冷媒ガス不足・ガス漏れ(発生率:約15%)

  • 経年劣化による微細漏れ
  • 施工不良
  • 配管接続部の緩み

5. コンプレッサー・基板故障(発生率:約10%)

  • 電気系統の不具合
  • 機械的故障
  • センサー異常

まずはどの段階の問題かを切り分けることが、解決への最短ルートです。

【STEP1】運転設定の確認(最優先・所要時間3分)

実は、業務用エアコンが効かない原因の中で最も多いのは設定・運用ミスです。専門業者を呼ぶ前に、必ず以下を確認してください。

✔ 確認項目(詳細版)

1-1. 運転モードの確認

  • 冷房/暖房/送風/自動のどれになっているか
  • ドライ(除湿)モードになっていないか
  • リモコン表示と実際の運転状態が一致しているか

よくある失敗例:

  • 冬場に「冷房」モードのままになっている
  • 自動モードで外気温によって意図しない運転になっている
  • 除湿モードで温度が下がりすぎている

1-2. 集中制御の確認

  • ビル管理システム(BMS)での制御有無
  • 季節切替の一斉制御がかかっていないか
  • 時間帯別の運転制限設定の確認
  • 個別リモコンと集中制御の優先順位

チェックポイント: 個別リモコンで操作しても反応しない場合、集中制御が優先されている可能性があります。

1-3. 設定温度と室温差

  • 設定温度が適切か(冷房:26~28℃、暖房:20~22℃)
  • 室温計との差を確認
  • サーミスタ(温度センサー)の位置と環境

重要: 設定温度と室温の差が2℃以内の場合、エアコンは「目標達成」と判断して能力を落とします。

1-4. タイマー設定

  • ON/OFFタイマーの競合
  • 週間タイマーの曜日設定
  • 複数のタイマー設定の重複

対処法

  • モード切替を実施
  • 集中制御の確認・一時解除
  • 設定温度の見直し(±3℃程度変更してテスト)
  • タイマー設定のリセット

所要時間:約3~5分
解決率:約35%

【STEP2】フィルター・内部汚れの確認(所要時間10分)

空調機の「呼吸」を妨げる汚れは、能力低下の主要因です。

✔ 確認項目(詳細版)

2-1. フィルターの状態

  • 最終清掃日はいつか(記録確認)
  • 目視での汚れ具合(光にかざして透過率を確認)
  • フィルター種類(標準/高性能/抗菌)

業界基準:

  • 一般オフィス:2週間~1ヶ月に1回
  • 飲食店:1~2週間に1回
  • 工場・倉庫:1週間に1回
  • クリーンルーム:週2回以上

2-2. 内部洗浄履歴

  • 前回の分解洗浄はいつか
  • 熱交換器(アルミフィン)の汚れ
  • ドレンパンの状態(水の滞留、カビ)
  • ファンの汚れ

効果の違い:

  • フィルター清掃のみ:能力5~10%向上
  • 内部洗浄込み:能力15~25%向上
  • 電気代:5~15%削減

フィルター汚れによる影響

汚れ度 能力低下 電気代増加 推定期間(オフィス)
軽度 5~10% 5~8% 1~2ヶ月未清掃
中度 15~25% 10~15% 3~6ヶ月未清掃
重度 30~50% 20~30% 6ヶ月以上未清掃

対処法

  1. 即時対応:フィルター清掃
    • 外して掃除機で吸引
    • 水洗い可能な場合は中性洗剤で洗浄
    • 完全乾燥後に再装着
  2. 短期対応:専門業者による内部洗浄
    • 標準洗浄:15,000~30,000円/台
    • 完全分解洗浄:30,000~60,000円/台

所要時間:フィルター清掃10分、内部洗浄2~4時間
解決率:約25%

【STEP3】室外機の設置環境確認(所要時間15分)

室外機は空調能力の心臓部です。排熱・吸熱がうまくいかないだけで、能力は大きく低下します。

✔ 確認項目(詳細版)

3-1. 吸排気の障害物チェック

  • 前面・背面・側面の空間確保(推奨:前面50cm、背面10cm、側面5cm以上)
  • 段ボール、資材、植栽などの障害物
  • 雪の吹き溜まり(冬季)
  • 落ち葉の堆積

3-2. 直射日光・外気条件

  • 日除け(ルーバー)の有無と状態
  • 真夏の直射日光による過熱(外気温+10℃以上になることも)
  • 極寒期の外気温(-10℃以下での暖房運転)

データ:

  • 外気温35℃超:冷房能力10~20%低下
  • 外気温-5℃以下:暖房能力20~30%低下
  • 直射日光下:外気温比+8~15℃上昇

3-3. 他設備との距離・干渉

  • 複数台の室外機が密集していないか
  • 排気の向きが他の吸気を妨げていないか
  • キュービクル(変電設備)からの熱の影響
  • 換気扇の排気との干渉

3-4. 室外機本体の状態

  • アルミフィン(熱交換器)の汚れ
  • ファンの回転(目視確認)
  • 異音の有無
  • 振動

対処法

  1. 障害物の即時撤去
  2. 日除けの設置(応急処置可)
  3. 室外機周辺の清掃
  4. 専門業者による熱交換器洗浄

所要時間:15~30分
解決率:約15%

【STEP4】専門診断が必要なケース(業者手配)

以下に該当する場合は、自己判断での対処は困難です。専門業者による点検が必要です。

✔ 専門診断が必要な症状

4-1. 温度変化が全くない

  • 長時間運転しても温度変化が2℃未満
  • 送風は出るが冷暖房効果が感じられない
  • 室内機からの風が生温い(冷房時)
  • 室内機からの風が冷たい(暖房時)

推定原因: 冷媒ガス不足、四方弁故障、コンプレッサー不良

4-2. エラーコード表示

  • リモコン、本体にエラー表示
  • 運転ランプの点滅パターン異常
  • 警報音の発生

対応:

  • エラーコード番号を記録
  • 取扱説明書で内容確認
  • メーカーサポートに連絡

4-3. 室外機の異常

  • 室外機が全く動かない(ファン停止)
  • 異常な音(ガラガラ、キーン、ゴー)
  • 激しい振動
  • 油漏れ、水漏れ

4-4. その他の異常

  • ブレーカーが頻繁に落ちる
  • 焦げ臭いにおい
  • 配管からの異音(シューシュー音=ガス漏れの可能性)
  • 氷結(冷房時に室内機が凍る、暖房時に室外機が過度に凍結)

推定される故障と費用目安

故障内容 修理費用目安 部品交換の場合
冷媒ガス補充 30,000~80,000円 ガス漏れ箇所修理+10万円~
基板交換 50,000~150,000円 部品代30,000~100,000円
コンプレッサー交換 150,000~400,000円 部品代100,000~300,000円
四方弁交換 60,000~120,000円 部品代20,000~50,000円
ファンモーター交換 40,000~100,000円 部品代15,000~40,000円

注: 業務用エアコンの修理費用は、容量・メーカー・設置状況により大きく変動します。

放置した場合のリスク【経営視点で重要】

空調不調を「まだ動くから」と放置すると、以下のリスクが発生します。

1. 修理費の雪だるま式増大

  • 初期:冷媒補充 5万円
  • 放置後:コンプレッサー交換 30万円
  • 差額:25万円

2. 突然停止による業務損失

  • 真夏・真冬の突然停止
  • 復旧まで数日~1週間
  • 代替機レンタル:10~30万円/週

3. 営業・業務への影響

  • オフィス: 従業員の生産性低下(15~25%)
  • 店舗: 来客数減少(20~40%)
  • 工場: 製品品質への影響
  • 医療施設: 感染リスク増加

4. テナント満足度の急落

  • クレーム対応コスト
  • 評判低下
  • 最悪ケース:契約解除、退去

試算例(商業テナント):

  • 空調停止期間:3日間
  • 客足減少:50%
  • 1日売上:50万円
  • 損失額:75万円(50万円×3日×50%)

ビル管理会社が知っておくべき予防保全のポイント

定期点検の実施基準

法定点検

  • フロン排出抑制法に基づく定期点検
    • 7.5kW以上50kW未満:3年に1回
    • 50kW以上:1年に1回
  • 簡易点検:3ヶ月に1回

自主保全

  • フィルター清掃:月1回
  • 目視点検:週1回
  • 試運転:季節前

コスト削減効果

適切なメンテナンスによる効果:

  • 電気代:年間10~20%削減
  • 修理費:50~70%削減
  • 設備寿命:3~5年延長
  • 故障率:60~80%低減

10年間の総コスト比較:

  • 予防保全あり:300万円
  • 事後対応のみ:600万円
  • 差額:300万円(50%削減)

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務用エアコンの寿命は何年ですか?

A: 一般的に10~15年とされていますが、使用環境やメンテナンス状況により大きく変わります。飲食店など過酷な環境では7~10年程度です。

Q2. 冷媒ガスは減るものですか?

A: 通常、冷媒ガスは密閉回路内を循環するため減りません。ガスが減っている場合は、必ずどこかで漏れが発生しています。

Q3. フィルター自動清掃機能付きエアコンは掃除不要?

A: いいえ。自動清掃は吸込口のフィルターのみで、ダストボックスの清掃や内部洗浄は別途必要です。

Q4. 室外機に水をかけて冷やすのは効果的?

A: 一時的な効果はありますが、推奨されません。電気部品への水の浸入リスクや、急激な温度変化による故障の可能性があります。

Q5. 古いエアコンは修理と買い替え、どちらが得?

A:

  • 10年未満: 修理を検討
  • 10~15年: 修理費が新品価格の50%以上なら買い替え
  • 15年以上: 買い替え推奨(省エネ性能も大幅向上)

まとめ|効率的なトラブルシューティングのフロー

業務用エアコンが冷えない・暖房が効かない場合の最適対応フロー

【推奨対応順序】

STEP1:設定確認(3分)
↓ 解決しない
STEP2:フィルター清掃(10分)
↓ 解決しない
STEP3:室外機環境確認(15分)
↓ 解決しない
STEP4:専門業者へ連絡

この順番で対応するメリット

約60%は自己解決可能
無駄な出張費用を削減(1回15,000~30,000円)
クレーム対応の初動が早い
業者への状況説明が的確になる

業者依頼時の準備事項

専門業者を呼ぶ際は、以下の情報を整理しておくとスムーズです:

  1. 基本情報
    • 機種名、型番
    • 設置年数
    • 保守契約の有無
  2. 症状
    • いつから発生したか
    • どんな症状か(冷えない、暖まらない、異音など)
    • エラーコードの有無
  3. 実施済み対応
    • STEP1~3で確認した内容
    • フィルター清掃の実施有無
    • 最終メンテナンス日

最後に:ビル管理のプロとして

空調管理は、ビル管理業務の要です。トラブルを未然に防ぎ、発生時には迅速に対応することで、テナント満足度の向上コスト削減の両立が可能になります。

本記事のチェックリストを活用し、効率的な空調管理を実現してください。

より詳しい情報や、個別の技術相談が必要な場合は、専門業者やメーカーサポートへご相談されることをお勧めします。

【執筆】 プロエンジニアリング